鹿児島県の薩摩半島の南端にある小さな集落で、速人は生まれ育った。

速人には生まれつきの発達障害があったが、それにとどまらず父親による家庭内暴力、兄からの身体的、性的な暴力、そして同じく発達障害だった母親からのネグレクトを受けていた。

彼がこれらの家庭環境によって深刻なトラウマを抱えていたのは自明だ。そのトラウマゆえに、彼は物心ついた頃から粗暴な行動が目立った。

注意された人に噛みつく、同級生の首を絞める、兄に包丁を向ける、学校のガラスを割る、女性教員に性的ないやがらせをする……。それは年齢が上がるにつれて悪化の一途をたどっていき、大人にも手に負えない状態になっていた。