逆恨みの理論武装
「いかにもインセル」な性格の持ち主には、理論武装で逆恨みを覆い隠すことも珍しくない。そのキーがレッドピルとブラックピルの二つだ。

このうちレッドピルはハリウッド映画「マトリックス」(1999)に由来する。「マトリックス」で主人公ネオが服用したレッドピルは、世の中で当たり前と思われていることが虚構で、真実の世界は別にあると目覚める錠剤だ。

ここから最近の英語で「レッドピルを飲む」は、一般的に「政府やメディアが伝える'常識'を疑い、自分自身で考える」比喩として用いられるが、インセルの文脈では主に以下の点に「目覚める」ことを指す。

・'男性が女性に対して支配的立場にある'という考えはウソ
・カップル成立には、地位、財力、容姿などで男性を選べる女性の決定権が大きい
・結婚制度そのものが女性の利益になる
・この世界で男性はむしろ不利に扱われている

この論理がかなりバイアスの強いものであることは、いうまでもない。いわゆる上昇婚は男性より女性に多いとしても、この論理はカップル成立における男性の決定権を過小評価しすぎで、「他者の悪意」を前提に、一部の事実を都合よく拡大解釈する陰謀論に近い。