子供の頃はいじめられた。ぽっちゃりして内向的で友達がいなくて、1人で練習をしていた。毎日4ダースのボールを2つのバケツに入れ、自転車に乗せて近くのテニスコートに向かい、フェンスに向けて96球を投げた。多くの球種を投げる才能があった(19球種といわれている)。

 高校ではとても頭が良く16歳で卒業。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に入って機械工学を学んだ。現在ヤンキースのエース右腕ゲリット・コールがチームメート。コールには「君にはプロになる実力はない」と言われたこともあるそうだが、バウアーはそれが間違っていたことを証明し、皮肉にも2021年にはコールを抜いてMLB最高年俸投手となった。

 バウアーは他のMLBの投手と違っていることを好んだ。物理雑誌「Physics Today」を読み、たばこは吸わず酔うこともない。体重はオーバー気味で速く走ることもできない。

独特の遠投でのウォームアップをルーティーンにしており、ファウルポール間を投げる。これをやる日本人選手もいるが、MLBではバウアーただ1人。電極を頭につけて脳のシナプスを刺激したりすることもある。

 2019年に日本を訪れ、このコラムのインタビューを受けたが、ぶっきらぼうで、ずけずけと言いたいことを言っていた。権力批判をすることで有名で、とげのある性格。午前中いっぱい一緒に過ごしたが、いつも内面に怒りを抱えて、それを押し殺しているように見えた。