立浪にこの本読ませたい

監督就任当初はとにかく気合が入っていた。余裕などまったくない。ただ「俺がこのチームを変えてやる!」という気持ちだけ。
心の中は「こんな野球をやっていて恥ずかしくないのか!」という怒りや情けなさ、そしてチームに対する危機感でいっぱいだった。
だから殴り込みのような勢いで選手の中に突っ込んでいった。

しかしガムシャラにやったのはいいが、1年間自分なりのスタイルでやってみて思うような結果は出せなかった。
僕は何かを変えなければいけないと強く感じていた。これまでと同じやり方を続けていてもチームは強くならないと痛感していた。

そこで2011年、僕は春季キャンプからチームを引いて眺めることにした。
基本的に練習はコーチ陣に任せる。守備は守備コーチ、打撃はバッティングコーチに指導してもらう。僕はそれに何も口を挟まない。ただ、練習に打ち込む選手の姿をじっと見ている。
そして「あいつ身体が重そうだな」とか「不機嫌そうに練習してるけど何かあったのかな」とかそういうことを観察している。

新しい試みはそれほど簡単なことではなかった。言いたいことがあっても我慢しなければならない。
現場に任せると決めたのに、ついつい口を挟んでしまう。そんなときはホテルに帰って「またやってしまった……気をつけよう」と反省した。
自分の気持ちを抑えることがこれほど難しいのかと驚かされた。

染みついた癖はなかなかとれなかったが黙って見守る新しいスタイルはやがて現場にも馴染んできた。
そしてこのやり方の方がチームはうまく回るという手応えが感じられた。
それもあって、2011年以降僕はずっとこのやり方を貫いている。
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