「“源田愛用”ゼットの内野グラブが売れています」

――今大会はミットだけでなく、全チームのピッチャーと内野手のグラブメーカーも調べたんですよね。何か気づいたことはありましたか。
星 内野手でゼットを使っている選手が増えましたね。
内野と言えばミズノが強く、今もシェア率はまだまだミズノがトップなのですが、ゼットがじわりじわりときている感じがします。
要因は2つあると思います。1つは、ものづくりがよくなっています。紐を通すところとか、仕上げがものすごく丁寧になった。
型づけなどもきちんとした状態で納品してくれる。なので、お客さんがグラブに手を入れたとき「めっちゃいいっすね!」というリアクションが増えた。
ゼットには鈴木浩さんというグラブづくりの名人がいて、その方が工場長に就任してから変わってきた印象がありますね。
うちの店でも最近、ゼットの内野グラブがけっこう出ているなと思っていたんです。それで調べてみたんですけど、甲子園でここまで増えているとは思いませんでしたね。
ゼットの内野グラブが支持される理由の2つ目。それはWBCで男を上げた西武の源田壮亮選手を筆頭に、
日本人離れした守備を見せるソフトバンクの今宮健太選手、驚異的な守備範囲を誇る巨人の吉川尚輝選手ら、
守備のスペシャリストたちが使っているこだわりのグラブだというイメージが定着したせいだと思います。
源田選手は、ゼット一筋ですしね。

――やはり源田モデルが一番人気なのですか。
星 WBC効果もあって、ますます人気が高まってきていますね。
ただ、もう一つ、この3人のモデルに加え、人気急上昇中の型があるんです。
それはプロ2年目、日本ハムのショートの上川畑大悟選手のものです。
プロではまだまだこれからの選手ですが、彼はNTT東日本時代、守備力で鳴らした選手でした。
なので、社会人プレーヤーを中心に、彼が愛用している「156型」というモデルも今、大人気です。
あと、テレビでは気づかなかったと思うのですが、この春から、じつは新色のグラブが出始めていたんです。

――WBCで大谷翔平が使っていたニューバランスのグラブは日本では発売にならないのですか。
星 高校野球対応のグラブは発売されないようです。基本的にシューズメーカーですから。
ナイキも佐々木朗希投手がグラブを使っていますが、ナイキはもう日本ではグラブ展開はしていません。
野球用具の拡張に関しては両メーカーともに慎重なようです。
以前、大谷選手と契約していたアシックスも、大谷選手の影響で投手グラブが売れたという話はそんなに聞いたことがありませんでしたからね。
内野手ならともかく、投手は能力とグラブがそれほど直接的な関係があるように思えない。
そのせいか、グラブの場合は、誰が使っているかではなく、誰が作っているのか、どこが作っているかの方がより重要なのだと思います。