「全員、近くの建設現場で働いてます」

 通訳を介してそう答えてくれたのは、店内で盛り上がっていた25歳のベトナム人の男性だ。来日して4年半。「ハノイから300キロぐらい」離れた村の出身で、技能実習生として来日して1年間ほど働いていたが、低賃金に苦しみ逃亡した。

 それから3年ほどボドイ(ベトナム人の不法滞在者や不法就労者のこと)として地下に潜り、やがて大阪に流れ着いたという。酒の勢いもあってかみんな人懐っこいので、話しかけると他の人もどんどん身の上を明かしてくれた。

 別のゲイアン省出身の若者は、やはり最初は技能実習生だったが逃亡、ボドイが多く暮らす群馬県太田市を経て「おもしろいから」西成区に来たという。大阪市内のベトナム人は、2011年末の960人が2021年末には1万9126人と、10年で20倍増という驚異的な増加数を示しており、なかでも西成区と生野区で急増している。

 ネップモイ(ベトナムの蒸留酒)をラッパ飲みしつつ、調子外れの音程でベトナム語カラオケを絶叫し続ける、西成区の建設現場で働くボドイ上がりの若者たち。彼らにとって、大阪の地はまさにフロンティアなのだ。

https://bunshun.jp/articles/-/53680