なお結局謝罪は実現してない模様

 以来、1年半近くが経過したが、謝罪の手紙も陳述書に対する返答も届いていない。飯塚受刑者にとって、謝罪とは何を意味していたのだろうか。松永さんが語気を強める。

「この申し出には本当に振り回されました。もちろん保険会社も営利目的だから自分たちの有利にしたいのは理解できます。だとしても、やり方がありますよね?」

 しかも、交通事故における民事訴訟では、賠償額の減額を狙ったとみられる、保険会社側からのこうした対応による二次被害が相次いでいるという。

「事故で愛する人を亡くしたり、歩けなくなったり、あるいは脳に損傷を負ったとか、一生癒えない傷を心にも体にも背負っている人を相手にしていることを、保険会社側は忘れないで欲しい。不必要に人の感情を逆撫でし、追い込んでいないかと問いたいのです。僕は保険会社1社が許せないと世の中に伝えたいわけではありません。業界全体というマクロな視点で、そういう二次被害を起こさないようにして欲しいのです」

 このような松永さんの心情に対し、被告代理人は取材にこう答えた。

「訴訟継続中なのでコメントは差し控えたい」