世界最大のカジノ企業「MGMリゾーツ・インターナショナル」でも、年間の売上高は約1兆3000億円(2021年)。ラスベガスのシティー・センターやベラージオ、MGMマカオなど世界中で複数のカジノを運営する企業だ。これに対し大阪IRは1施設で5200億円を稼ぐつもり。ちょっと無謀のような気もするが、実現すればいきなり世界4、5位のカジノ企業に躍り出る。MGMリゾーツはコロナ中も苦戦したが、2022年12月期も営業利益は17億ドル(約2300億円)の赤字だ。

 大阪IRの場合、大小50以上のカジノ施設があるマカオや同15カ所の韓国がライバルとなるほか、2021年に10兆円市場に達したオンラインカジノとも競争しなくてはいけない。

■1人6000円の入場料で客は入るのか?

 大阪IRは入場料だけを見ても、1人6000円で、年間約320億円の収入と試算している。国に半分の3000円を持っていかれるので、大阪府・市は1人3000円もらえる。入場者は6000円払った時点でかなりの負け額だが、そういう人が約1060万人(回)足を運んでくれて、ようやく320億円になる計算。1日当たり約3万人だ。

 前述の通り、カジノの面積は施設全体の3%に制限されるため、完成する施設は大規模パチンコ店が2つくらい入る程度のサイズ。そこに24時間営業とはいえ、訪日外国人とは別に1日3万人が詰めかけたら、ぎゅうぎゅう詰めどころの騒ぎではないはず……。

■年間約740億円の納付金は過剰では?

 大阪IRは事業者から徴収する認定都道府県等納付金を年間約740億円と見積もっている。カジノ施設の設置及び運営者から徴収するショバ代のことだ。

 ところが、首相官邸が公表している資料によると、ラスベガスのある米ネバダ州でもカジノ税による税収は年間743.8億円(2016年度=カジノ数は271施設)。このほか、スロットマシン(1台250ドル)やテーブルにかけるゲーミング税の77.8億円を足しても合計約820億円だ。

 現在の為替に直せば1000億円ほどになるが、大阪IRは同じくらいの金額を徴収できると思っている。繰り返すが、大阪IRは1つの施設だ。

■年間2000万人も客は来るのか?

 年間来訪者は日本人が約1400万人、訪日外国人が約600万人。カジノ目的だけの人もいるが、多くの人は会議やイベントで訪れることになるだろう。

 しかし、カジノとの二枚看板である「国際会議場」と「展示場」の広さは計画段階からどんどん削られ、国際会議場(大小10室)が延べ1万2960平方メートル、展示場(ホールA、B)は延べ2万平方メートル。両方を合わせても東京ビッグサイトの3分の1、幕張メッセの4分の1しかない。ちなみに、東京ビッグサイトの年間入場者数は約1400万人、幕張メッセが約700万人なので、大阪IRの年間2000万人がどういう基準で出したのか謎だ。

 大阪IRの初期投資額はおよそ1兆800億円で、約半分の5300億円をMGMリゾーツとオリックス、地元関西企業が出し、残りの約5500億円は銀行からの“借金”だ。「大阪にカジノができたら、めっちゃ儲かるやん」と思っている人がまだいたら、いま一度冷静になってみたい。

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