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一向に減らないエラーの数は、選手を一つのポジションに専念させないからだ、という見方もあった。

だが、矢野の答えは明解だった。

「それって、昔の先入観やと思うんです。昔の正解、日本一強いチームはこうなんや、固定されてるもんなんやっていう正解は、これから崩れていくはずなんです。以前、先発ピッチャーは9回投げ切ってなんぼ、みたいなところあったやないですか。いや、投げられるピッチャーがいるんなら投げさしたらいい。でも、投げ切ることを前提に戦い方を考えるのって、もはや主流ではなくなってますよね。ぼくは、固定するやり方もありやなとは思いますけど、固定はええ、動かすのはあかんとは思いません」

固定するメリットが、選手がそのポジションに集中できるということにあるとするならば、では、複数のポジションを守らせるメリットはどこにあるのか。

「このポジションは誰それで決まりってことになったら、同じポジションの選手って、モチベーションが下がっちゃうと思うんです。いや、それでもモチベーションをあげるのがプロやって考え方もあるでしょうけど、ぼくは、チーム全体が1パーセントずつでもいいからレベル、実力をあげていけるやり方にしたかった。ポジションを固定しないことで、追う立場の選手は「よし、俺にもチャンスがある」って思うでしょうし、追われる側の選手も「なんでやねん」って反骨心がググッと盛り上がってくるかもしれない。その方がチームを活性化できるんじゃないか。ぼくはそう思ってました」