98年に生まれた長男の雅が17年に騎手デビュー。当時、雅は父から次のような事を言われたと語っていた。
 「父親が調教師という恵まれた環境だからといって甘えるな」
 その言葉に嘘はないだろう。しかし、実の息子を気にかけない親などいない。落馬による長期休養等もあり、苦しむ雅騎手に「少しでも早く重賞を勝ってほしい」という思いを善則調教師は持ち続けていた事だろう。そんな中で現れたモリアーナ。雅を背に新馬戦を快勝すると、続くコスモス賞も勝利し、阪神ジュベナイルフィリーズ(GT)では2番人気に支持された。
ところがそこで12着に敗れるとクイーンC(GV)が3着でニュージーランドT(GU)も4着に敗退。今週末に行われるNHKマイルC(GT)ではついに横山典弘騎手への乗り替わりが発表された。
 「プロの騎手として結果を残せなかったのだから、仕方ないでしょう」
 息子を鞍上から下ろすという非情の決断に、父はそう言った。言葉ではそう言いつつも、唇を噛む表情に、その心境が見てとれた。
 “獅子は我が子を千尋の谷に落とす”と言うが、雅騎手は「父に二度とこんな決断をさせないように」と更なる努力をする事だろう。まだ25歳の若さの彼が、これを糧に一段と成長する事を願うと共に、今週末のモリアーナの好走にも期待しよう。

武藤😭