JRAは、さらに、スマホの持ち込み、動画の閲覧が一部で常態化しているものとみて、今後の対策を急ぐ考えを明かした。
なぜ今回の事件は起きたのか。
JRAの久保厚審判部長は、会見で「今回については通信機器の使用に関してルールをしっかり把握していなかった。誤った解釈をしていたところもあった。通信機器の使用のルールを守らなければいけないというのは全員理解していると思うが、外部や第三者との連絡はダメということで、騎手同士でするものは、許されるのではないかという誤った解釈があった」と説明した。
今回、処分を受けたのは、デビュー1年目から3年目。いわゆるZ世代だ。情報リテラシーに優れている反面、ネットとの距離も近くスマホでのネット閲覧が“日常のこと”として刷り込まれる環境で育ってきた。
JRAの説明のように、公正確保についての認識の甘さがあったようで、接触が禁止されている部外者の定義やスマホ使用ルールについても誤った解釈をしていた節がある。

ある若手騎手が所属する厩舎の調教師は「言語道断だ。彼女らは、身近にいる厩舎関係者となら連絡を取り合ってもいいと思っていたようなところがある。騎手としていいこと、ダメなことは、当然、分かっていると思っていたが、こちら側の教育が足りなかった」と、反省して世代間のギャップを嘆いた。
一方でJRAの管理不足という側面があったことも否めない。
実は、調整ルーム内へのスマホなどの電子機器を持ち込みが厳しく禁じられていたわけではなく、職員に届け出を行い、ダウンロードされた過去のレース映像などであれば閲覧は認められていたとのこと。
某元騎手は「今どきとはいえ、騎手同士で馬の情報を交換し合っており、そんなときに映像が役に立っているのだろう。勝負師ではなくなっており、特にいまの若手は仲がいい」と昨今の事情を話す。

さらに今回の若手ジョッキーのデビューが、新型コロナ禍というかつてない環境と重なっていたという特殊な時代背景もあった。通常の指定の調整ルームは”密”になるため、自宅や認定調整ルーム(ホテル)から競馬場に入ることが認められ、それにともないスマホの管理が緩くなった面はあったと見られる。
また女子ジョッキーが一気に増えた多様性の時代にJRAの管理体制が追い付いていなかったという事情もある。
ジョッキールームは、男女で分かれており、密室に近い女性のジョッキールームのチェックが、行き届かなかった。前出のJRAの審判部長は、「男子は数も多いので、互いの目が気になっただろうが、女性ジョッキーは6人しかおらず閉鎖された空間で、我々も入りづらい。管理が甘くなったと思う」と反省した。6人しか所属のない女性ジョッキーの場合、先輩ジョッキーから注意を喚起されるなどの環境もなかったのである。

他の公営ギャンブルでも、開催期間中に施設に隔離するのは当然のこと、スマホの使用に関しても厳しく管理している。例えば、女性レーサーの多いボートレースでは、男女問わず、スマホについては徹底管理。レース前日の前検日に所持しているスマホを主催者側に提出。開催中は、ずっと保管されて使用できず返却されるのはレース最終日にレース場を出るときだ。あるレーサーは「毎回、スーツケースを開けて荷物検査があるし、ある選手が2台あるうちの1台を提出し忘れ、その後に渡したのに1年間レースに出られなかったこともある」という話をしていた。

古川奈は、3日夜、自身のインスタグラムを更新して謝罪文を掲載した。
「この度、携帯電話の使用についてJRAより騎乗停止30日という処分を受けました。自身の認識の甘さにより、多くの皆様にご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。今回の処分を深く受け止めて、しっかりと反省します」とし、最後に「この度は誠に申し訳ございませんでした」と結んだ。 
スマホの不正使用で処分されたというのに、その謝罪を、またSNSですますというのも、Z世代ゆえの行動なのだろうか。