この水車小屋をはじめとする建物もハウステンボスに存在するものですが、その背景にイシャバーナのフラピュタル城を合成し全景を見せた上で、実際にヒメノを中心としたお芝居はLEDウォールの前で撮影されています。LEDに投影する際に、表現する時間帯によって色調を変えることによって、デイタイムと夕景を表現しているのが分かっていただけると思います。
ハウステンボスは少数精鋭で撮影に挑んだため、メイキングがなく。ロケハン写真でのご紹介。そして、ヒメノが爆破した小屋が見えるこの風景。
前回、北海道編で紹介した美瑛町の四季彩の丘とハウステンボスの水車を合成したものです。さらに、手前の爆破された小屋は別の場所(関東近郊)で撮影されたもの。この絵の中には、北海道と九州と関東の風景が詰まっているという訳です……。
その他、3話でバグナラクに襲撃されるイシャバーナの街としてなど、そのまま使用されている箇所もあり、次回12話の撮影でも使われていますので、ぜひご注目ください。
このように、西洋の風景を求めるスタッフの戦いは様々な方面に及びました。和歌山ポルトヨーロッパや志摩スペイン村もロケハンや撮影を敢行。極めつけはチェコ共和国の企業にもお問い合わせしたり…。チェコはハリウッド作品をはじめ、昨今世界中から映画のロケ誘致を行っている国であり、バーチャルプロダクションの技術も進んでいるため、アセットの制作や物体のキャプチャーなど技術先進国なのです。こちらからも、チェコの街の一角を360度カメラで撮影してもらうことなどを検討したほど。残念ながら叶いませんでしたが、今回は西洋風の景色をいかに実現するかに苦心したのでした。
九州編からはもう1つ。長崎市の大中尾棚田です。
4話で紹介したトウフの情景。この棚田は長崎県で撮影されたリアル棚田です。(ちなみに稲穂の寄りは小豆島で撮影)北海道編を共に駆け抜けた撮影隊の熱い絆が九州にも駆け抜けたとか。
この他にも、長崎は九十九島展望台、熊本の通潤橋や草千里、鍋ヶ滝などもロケハンや撮影を敢行。本来の撮影に先んじて行ったこれらの下絵撮影によって『王様戦隊キングオージャー』が得たのは、関東圏では撮影できない広大な風景や西洋風の景色という場所の要素だけではありませんでした。通常、真冬から始まるスーパー戦隊シリーズの撮影にあって、先行下絵撮影は夏や秋という四季折々の背景をフィルムに閉じ込めたのです。これによって、イシャバーナの花が咲き誇る景色や、トウフの実りの秋の情景が実現し、シリーズの歴史にとっても本当に貴重な挑戦となりました!次回は下絵の最終、本州編です!!
つづく(文責 大森敬仁)