コナミが対サイゲームスの訴訟で使用した(と思われる)特許の分析
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20230518-00350002
一般に、特許権は広ければ広いほど侵害を認められやすいが無効にされやすく、狭ければ狭いほど侵害は否認されやすいが無効にされにくくなります。広い特許と分割出願の繰り返しより得られた狭い特許のバリエーションで攻められると、攻められた方にとってはかなりやっかいです。最近の分割出願を見るとかなり実装に近い狭い範囲の権利になっています。たとえば、(「ウマ娘」のリリースより後の)2021年7月8日に出願され、2021年10月27日に登録された特許6967320号の請求項1は以下のとおりです。

【請求項1】
シナリオに基づいて進行される、第2キャラクタのパラメータを変更又は設定することによって前記第2キャラクタを育成する第1ゲームと、前記第1ゲームで育成した前記第2キャラクタを用いた第2ゲームと、を含むゲームを提供し、
複数の第1キャラクタの中から抽選により決定された少なくとも1つの第1キャラクタと、ユーザ識別情報とを関連付けて記憶装置に記憶させ、
前記第1ゲームにおける前記シナリオが開始される前に、前記ユーザ識別情報と関連付けられた複数の第1キャラクタのうちの1以上の第1キャラクタが設定されるデッキが、ユーザの操作に基づいて編成され、
前記第1ゲームでは、前記デッキに設定された前記第1キャラクタに基づいて発生したイベントによって、前記第2キャラクタの前記パラメータが変更又は設定される、

ゲームシステムであって、
前記第1キャラクタと前記第2キャラクタとの関係性の度合いを示す関係度を管理する関係度管理手段と、
前記第1ゲームにおける前記第2キャラクタの行動を選択するための複数のコマンドの中から1つのコマンドを前記ユーザに選択させるコマンド選択手段と、
前記ユーザによって選択された前記コマンドに応じて前記第1ゲームを進行させる第1ゲーム進行手段と、
を含み、
前記複数のコマンドには、内容の異なる複数の練習コマンドが含まれ、
前記関係度管理手段は、前記ユーザに選択された前記練習コマンドによって、前記第2キャラクタと前記デッキに設定された前記第1キャラクタとが一緒に行動して前記第1ゲームが進行された場合、一緒に行動した前記第1キャラクタと前記第2キャラクタとの前記関係度の値を変化させ、
前記第1ゲーム進行手段は、前記関係度管理手段が前記関係度の値を変化させた結果、変化後の前記関係度の値が所定の基準に達した場合、当該所定の基準に達した以降に前記イベントを発生させうる、ゲームシステム。

私は本件の調査のために「ウマ娘」をインストールしたばかりなので確証は持てないですが、これって、意図的に「ウマ娘」に寄せているのではないでしょうか?そうなると、非侵害の主張は困難(仮に設計変更で侵害回避しても過去の侵害の損害賠償の責は免れない)、無効の主張も困難(1件だけなら何とかなっても同じような特許が他に10件以上あります)ということでなかなか厳しそうです。