「お前だって論法」は詭弁だとか論理学上の誤謬だと指摘されていても、なぜ多用されるのですか?

人情的には説得的な論法だからです。

論理は説得において最も確かな働きをしますが、情は説得において、論理よりも先に、説得する相手らの中に渦巻いています。

人々が悪いやつだ思っている人を、悪いやつだと論証し、説得することは容易で、悪くないやつだも論証し説得することは困難です。

同じように論者の主張ではなく、主張とは区別できるはずの考え方や振る舞い一般を非難すると、人々はそれらの個別の振る舞いを超えてその人の方へと非難の情を差し向け、併せて彼の主張にまで疑惑を抱くのです。

それ故に、論理的に誤謬(陥りやすい非論理的な論法)であっても、非常に説得力のある強力な論法なのです。ですが、当然ながら、これは自他の主張を直接、真にしたり偽にすることのない、いわば、ルール外的なバトルなのです。サッカーの試合でこっそりファールに該当する振る舞いで相手と戦うように。