芸人はどんなにえらくなっても、つまりは遊民なのです。
世の中の余裕ーーおあまりで生きているものです。
ことに、落語というものは、「人を馬鹿にした芸」なのですから、
洒落(しゃれ)が生命(いのち)なのです。
 わたしがむかし、師匠米団治から言われた言葉を最後に記します。
『芸人は、米一粒、釘(くぎ)一本もよう作らんくせに、
酒が良(え)えの悪いのと言うて、
好きな芸をやって一生を送るもんやさかいに、むさぼってはいかん。
ねうちは世間がきめてくれる。
ただ一生懸命に芸をみがく以外に、世間へのお返しの途(みち)はない。
また、芸人になった以上、末路哀れは覚悟の前やで』

桂米朝