小久保2軍監督〝惨劇〟の予感

 ただ、小久保2軍監督は、こうした〝惨劇〟を予感していたフシはあった。26日の阪神戦(鳴尾浜)の1回、先発スチュワートの154キロストレートを左中間へ運ぶ本塁打としたのが、阪神の3番・小野寺。育成出身の4年目の外野手は、今季も1軍でスタメンに名を連ねた試合もあるなど、力をつけてきた一人。その小野寺が、1回の第1打席、ファーストストライクの剛球を本塁打にした鋭いスイングに、小久保2軍監督は、敵ながら称賛を惜しまなかった。

 「パチンと一回でね、スチュワートに対しての1打席目で、あんな真っすぐを1球で捉えるなんて、さすが1軍から(2軍に)落ちてきたバッターやな、という感じはしましたね。あの球を1巡目で打てるバッターがじゃあ、ホークスにいますか? 1番から9番まで並んでいますけど、いますか、といったらいないですね。全員、ファウルとか空振りです。その差はありますね。ファームでオリックスもそうなんですけど、阪神の選手もレベルが高いですよ」

ただ、阪神とソフトバンクでは、チーム事情や選手構成に、大きな違いがあることだけは付記しておきたい。阪神の場合だと、今季の育成選手は5人。1軍と2軍の〝ツー・ユニット〟でのチーム構成とあって、この日のビーズリーや西純、打者でも1軍で今季スタメン出場した小野寺、井上らが実戦出場するケースが多く、いわば〝1・5軍級〟の強さがある。

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 一方、育成54選手、総勢121選手の4軍制をとるソフトバンクは、この日も3軍が愛媛で遠征試合を行うなど、戦力が分散するというチーム事情もある。だから、ソフトバンクのファームに力がなく、阪神が強いという、単純な図式では捉えられず、またソフトバンクのファームは、選手ごとに、打席数などの機会平等を踏まえた上での選手起用でもあるため、打てないからといって、すぐに代打を送るというような選手起用法は取らないという一面もある。

 とはいえ、1軍クラスの投手と対戦できるという、この絶好の機会を生かしきれず、走者が出たのは1、6、8回の3イニングだけで、あとは三者凡退という完全な力負け。名古屋から鳴尾浜、姫路と続いた6連戦のラストゲームが、実に淡泊な負け試合。指揮官の怒りと完敗の悔しさから、若鷹たちが、今後の〝奮起への糧〟をつかんでくれればいいのだが…。