オクタヴィアヌスは生まれつき、左首に人の拳2個分の大きさの瘤の塊を抱えた醜い姿でこの世に出て来ました。幸いに良性の脂肪瘤だったのですが、一方で除去手術に踏み切るには頸動脈の近辺でリスクが大き過ぎました。

育ち盛りにシッカリ喰わせてビッシリ追うことでサラブレッドは心身を育んでいきます。しかしオクタヴィアヌスの場合、馬体の成長に連れて瘤も大きくなり様々なリスクも考えておかねばなりません。瘤の為にクラブで募集する事もセリに出す事も出来ません。スタッフ会議で競走馬を目指すか否か瘤の存在を慎重に精密に見極めながらの育成・調教の難しさは想像に余ります。

牧場の方々、厩舎スタッフの皆さんの大変さが目に浮かぶようです。

山本オーナーに決断が委ねられます。

ついに入厩の日が…しかし誰が受け入れてくれるのか…全てを承知で受け入れてくれた調教師がいました。今をときめく木村哲也調教師です。一流の血統馬が煌めく木村厩舎に首に大きなコブを持つ異形の馬、どの調教師も敬遠する仕事に真正面から取り組み、ゆっくり、我慢強く異形の馬の特徴を見極めながら厩舎一丸で…3戦目で見事に一番最初にゴールさせました。