これまでにセ・リーグでDHの機運が最も高まったのは、17年のドラフト前だ。高校通算本塁打記録を更新した早実高・清宮がプロ志望を表明したのを受け、スター選手がパ・リーグに偏っている状況に危機感を募らせていたセ側は「清宮はパには渡せない」との認識で一致。ドラフト前の各球団との面談時に誠意を示す材料として、守備に不安がある清宮のためにセでもDHを導入しようと複数球団が動いた。

現場の首脳陣や選手の考えとは別に、各球団のフロント間でもDH制に対する温度差は大きい。導入に伴うデメリットとして、現状セ・リーグのレギュラー野手は8人だが、DH要員の追加で9人に増えた分だけ、人件費がかさむという指摘がある。しかし、巨人の球団幹部は「過去のパ・リーグ各球団の年俸を調査して、DH制だから年俸が余計にかかるというのは誤解だと確認した」と断言。むしろネックとして挙がるのが、先述のオーナー名の提案書を提出した巨人に対する感情的なアレルギー反応だ。

「DH制の是非はあくまで6球団の間で話し合うもの。提案書をマスコミを通して公開し、世論を味方につけて議論を有利に進めようというやり方に、強い反発を示した球団があった」と球界関係者は明かす。この球団の首脳は「自分がいるうちはDHを議論すること自体、認められない」と態度を硬化したままともされ、DH制が実現へと進むには絶望的な状況にある。

DH制議論はええが巨人のやり方が気に食わないらしい