穂野香さんが母親に「詐欺にだまされたかもしれない」と打ち明けたのは、金を支払ってから2週間後だった。普段と様子が違う娘に「どうしたの」と尋ねると、ぽつり、ぽつりと話し始めたという。

詐欺を疑った穂野香さんは自分で弁護士や消費生活センターに相談していた。男からは「クーリングオフはできない」「返金できない」と突っぱねられたといい、事態は動かなかった。母娘は消費者金融への返済とともに、警察に相談に行くことにした。それが、10月1日だった。


■母が感じた怒り「どうしても許せない」
「昼から一緒に行こう。今までの証拠だけまとめておいて」と頼み、佐永子さんは穂野香さんを家に残し、仕事に向かった。帰宅すると、穂野香さんの姿はなかった。探し回ったが見つからない。

日付が変わるころ、警察から連絡があった。警察署の霊安室で、動かない穂野香さんと顔を合わせた。「なんであの時仕事に行ってしまったんやろう」。佐永子さんは悔やんだ。