5年間在籍した昨季までの本拠地で、日本ハムのアリエル・マルティネス捕手が恩返しの逆転3ランを放った。6回1死一、二塁。中日・藤嶋の球筋は元女房役として熟知していた。マルティネスは「軌道はよくわかっている。ストレートの信頼度が高い投手だ」。高めに浮いた直球を逃さず振り抜き、右翼席の古巣ファンのもとへアーチをかけた。

 慣れ親しんだバンテリンドームでの劇的弾。そしてキャリハイの9号。マルティネスは胸に迫る万感を、恒例のハートポーズのセレブレーションを封印することで表現した。「お世話になった人たちの前で『イエイ』とはできない。それが自分なりの敬意の払い方だ」としみじみと語った。

 日本ハムへ新天地を求めた今も、古巣への特別な思いが消えることはない。「やっぱり居心地がいい。この球場が恋しいと思ったこともたびたびある」と明かす。16日の練習前には中日・立浪和義監督のもとへあいさつへ出向いた。「尊敬している立浪さんから『最近調子いいね。打ってるね』と言葉をかけて頂いた」。自然と笑顔になった。