藤井とは過去3戦3敗。最後の対局は19年のC級1組順位戦で、相掛かりの将棋を118手で敗れた。
以来4年。「村田システム」はこの間に生み出した。今回、採用を公言するのは相手が藤井だからだ。
「最強の相手で、オリジナル戦法の真価を問いたい」と話す。

村田システムの全体像はまだ見えない。「角道は開けない。先手なら[先]5六歩として(中央から)主に右銀を繰り出していく」。
将棋の初手は、飛先の歩を突くか、角道を開けるかのほぼ2択。
村田システムは、その角道を開けず、王の頭上にある歩を早くに突く。そのため危険度は増し、AIの評価値も低い。
村田自身「積み上げている途中」だからこそ、藤井戦を通じて見える成果と課題に期待する。

今やAIを活用しない棋士はいないかもしれない。ただそれだけでは、盤上に独創性を描くことは難しい。
村田は「相手が想定せず、自分だけ想定した将棋の方が戦略的にいいのでは?」と考えた。
相掛かり、角換わり、横歩取り、矢倉。居飛車4大戦法以外に鉱脈を求めた。

「藤井さんに迫ろうと努力すること自体が一つの上達法。棋士全体を引っ張ってくれている」。
16歳年下の後輩へ抱く敬意を胸に、大勝負へ「村田システム」で臨む。