汐留駅に向かう名倉清孝の足取りは重かった。

スマホで簡単にエロサイトを閲覧できる今の時代、活字だけのエロに一体どれだけの対価が支払われるというのか。
薄々気が付いていた。自分はもう必要とされていないのではないか。
そんな中でも糊口をしのぐため、性欲が枯れて久しい脳で必死に卑猥な文章を捻り出す日々。いつ職を追われるとも分からぬ重圧からだろうか、この数年ろくに眠れたためしはなく、日に数度キリキリと胃が痛み、生え際はとっくに頭頂部を越え後退しきっていた。
ペニス柏木とオチンポ名倉。伝説と呼ばれたかつての頃の面影はない。

そしてその日は来た。

「先生、今まで本当にお疲れ様でした」
人工知能による名倉柏木判定プログラム出現から程無くして、名倉柏木生成プログラムが誕生した。
プログラムで生成した文章を実験的に本誌で1年掲載するも、違和感に気づく読者はついに現れなかった。
名実ともに出版社から別れを告げられた。

今まで売店に寄らず帰っていたが、この日は強めの酒を買い家路についた。