しかし、彼の癌は再発してしまった。それについて、後悔はたくさんある。退院の後、専門の病院で改めて徹底的に検査させるべきだった。経過についても、普段からもっと聞いておくべきだった。一緒に食事に行く機会は何度もあったのに、元気そうにニコニコしている彼の姿を見て、僕は安心してしまった。思えば、僕が手渡した「νガンダム」をなかなか作ろうとしないのは、彼なりに何か感じるところがあったからなのかもしれないのに。でも、それももう聞くことができない。

 僕は、彼が作ってくれると約束したνガンダムを受け取っていない。でも、きっと、向こうに持って行ってくれたんだろう、と思っている。色々な玩具が大好きな彼の事だ、ガンプラが無かったら、きっととても辛いだろうから。前向きで、とても優しい彼だから、向こうでも光の戦士たちを勧誘し、きっと皆で冒険を続けているに違いない。独身万歳と笑いながら、νガンダムを作ってくれているといいな。

 残念ながら、僕はまだ当分、彼の元へ行くつもりが無い。彼も望まないだろう。僕にはまだまだやることがあって、それは彼が大好きだったオンラインゲームの世界を、FFXIVという名前を借りて、もっともっと多くの人が楽しめるものとして続けていくこと。
「光のお父さん」が映像化されると決まった時、二人で約束をした。彼はその後もFFXIVをいちプレイヤーとして楽しみ、僕は制作者としてそれを作り続ける。プライベートになれば、お互いオンラインゲームとガンダムが大好きな同志だけどね、と。

 時間が経てば、いずれ彼とは再会できる日が来る。その時はきっと、若葉マークを付けて、右も左もわからず途方に暮れている僕に、彼は向こうで見つけた仲間と共に、「初心者の方ですね!大丈夫、こっちも楽しいですよ、一緒に冒険しましょう」と手を差し伸べてくれるに違いない。そして、その手にはνガンダムが握られていると、僕はそう信じている。

 おやすみ、マイディー。本当によく頑張ったね。またいつか会おう。


2020年12月10日
オンライナー "光の戦士" 吉田 直樹

https://jp.finalfantasyxiv.com/blog/003067.html