今度は脊髄に腫瘍できてたんやな

実は――再び闘病生活を送ることになってしまいました。

本にも書いたとおり、脳の腫瘍は手術から半年ほど経過した2017年7月下旬に寛解しました。視力だけはどうしても元通りにはなりませんでしたが、身体は再び野球ができるまで回復。阪神球団のご厚意もあり、翌シーズンにはグラウンドに復帰することができました。

残念ながら、目標だった公式戦出場はかなわず、引退を余儀なくされましたが、これからは自分の経験を伝えることで、苦しんでいる人たちの力になりたいという新たな目標を抱き、第二の人生をスタートさせました。

そんな矢先、2020年9月のこと。腰と左足に激しい痛みが走ったのです。

その1か月ほど前からときどき痛みを感じることがあり、「なんか変だな」と気づいてはいました。ただ、痛みがずっと続くことはなく、しばらくするとおさまったので、様子を見ていました。

しかし、痛みはだんだんひどくなっていきました。左足は痛むというより、触っても感覚がない状態で、腰は日常生活に支障が出るほど痛かった。立ち上がったり、かがんだりするだけで、ズキンと激痛がするのです。これまで経験したことのない痛みで、それが1週間くらい続きました。

「これは普通じゃないぞ……」

心配になって両親に相談すると、「前回のこともあるので、一度病院で診てもらおう」ということになり、鹿児島の整形外科を受診しました。

MRIで撮った写真を見ながら、先生は言いました。

「脊髄(せきずい)に腫瘍があります」

腫瘍が転移していたのです。

「まさか!」

半年におよんだ、つらく、苦しい治療を経て、ようやく脳腫瘍が寛解してからおよそ3年。「もう二度と病気にはなりたくない」と思っていたし、転移なんてまったく想像していなかった。6月には定期検査を受けて、なんの問題もありませんでした。100パーセント治ったと信じ、安心して生活していたのに……。

すぐに脳腫瘍のときにお世話になった大阪大学医学部附属病院に行き、精密検査を受けましたが、結果は同じ。そのまま入院し、再び治療を始めることになりました。