木村花さんを引き合いに出すのは死者への冒涜
盗作犯と一緒にするな


https://hochi.news/articles/20230715-OHT1T51062.html

「盗作」騒動から4年。問題となった自身の制作について勝海さんは「大学内で書いて、(他作品を参考に)習作としてやるのは大学内では認められていた。でも、私は当時、外にも(銭湯絵師見習いとして)出て、ネットにも(作品を)出してしまったのは良くなかったし、ただの学生の習作をアーティストのように出してしまったことは反省をしております」と話す。

 「だけど、作品としては、なんら恥じる点はないです。確かに非常に微妙な点はあると思ってますが、今、私はそう思ってます」ときっぱり。「盗作」騒動の発端となった猫将軍氏とも騒動直後に事務所のある大阪まで謝罪に行ったことで、今ではLINEをやり取りする仲になったという。

 だが、勝海さんの“地獄”はここからだった。“美し過ぎる銭湯絵師見習い”から“パクリ画家”への一気の転落に、ネット社会がキバをむいたのだ。

 ネット上には自身をバッシングする言葉の数々が並び、その状況は20年5月に恋愛リアリティー番組への出演をきっかけにネットリンチを受け、死に追いやられた元女子プロレスラー・木村花さん(享年22)と酷似したものになった。

 「辛かったです。全てから逃げたくなってしまって。リセットしたい、いなくなってしまいたいという気持ちでした」と振り返ると、「眠れなくて、アルコールの力で気絶するように寝る日々で。家族や友だちは優しい言葉をかけてくれるんですけど、ネットの世界とのギャップについていけなくて。1、2回会っただけの先輩が『俺はみんなみたいにおまえに甘くしないぞ。おまえを罵倒してやる』と言ってくると、そっちを信用して洗脳みたいになってしまったり。みんな、本当はネットのようなことを思ってるんじゃないか?と疑ってしまうようになって」と声を震わせながら続けた。

「(批判の言葉を)見ると止まらなくなる。あえて『勝海、かわいそう』とかのキーワードで調べたりとか」という精神状態に陥っただけでなく、山本一郎氏など有名ブロガーらも“勝海バッシング”に参戦。自身を攻める論調を張ったこともこたえた。

 体重は50キロから36キロまで落ちた。

 「骨と皮まで痩せることで、罪から解放されるような、少し許されるような気持ちになっていました」と勝海さん。

 風呂に2週間入れなかったこともあった。自身の体からは異臭が漂い、なんとか入浴するも脱衣所で体力がなくなり、服も着られずにうずくまっていたところを妹に目撃されてしまった。

 「あばらとお尻の骨が浮き出ている私を見てショックを受けて『麻衣姉ちゃんが死んじゃう』と泣いていたことを覚えてます。妹にはトラウマを植え付けてしまったようで申し訳ないと思っています」と話す。

 精神科に通院し、パニック障害、鬱状態、PTSDと診断され、抗不安薬、睡眠導入剤を服用。芸大大学院も担当教授の「休んだ方がいい」という勧めで2年間、休学することになった。

 だが、その間、父で医師の勝海東一郎さん(56)を始め家族が全力で支えてくれた。「私は周りに恵まれた。家族は1人にしないようにしてくれた」という環境の中、“サバイバル”にかろうじて成功した。

 そして、その心に1人の許せない存在が浮上した。執拗に匿名で誹謗中傷を書き続けてきた1人の人物の存在。勝海さんは法廷の場で戦うことを決めた。(後編に続く)