金本の優しさにも泣けるな

沖縄で脳腫瘍だとわかり、宿舎の部屋を訪ねたとき、金本監督は話をすでに聞いていたらしく、僕に言いました。
「おれも知り合いの先生にいろいろ聞いてみたら、どの先生も必ず治ると言ってる。もう少し辛抱しろよ」
入院してからも、シーズン真っ只中にもかかわらず、何度も見舞いに来てくれました。中学生だった娘さんと一緒に来られたときがあって、娘さんが一生懸命折った千羽鶴をプレゼントしていただきました。
「娘がおまえのファンなんだよ」
そう言われたときは、「まさか」と思いながらも、とてもうれしかった。
差し入れもよくしてもらいました。あるとき、わざわざ試合前にお寿司を持ってきてくれたことがありました。有名店のお寿司で、「いま握ってもらったから、おいしいぞ」と言いながら差し出してくれました。
ところが、母によれば、よりによって僕はこう言ったそうです。
「肉が食べたかったです」
僕はまったく憶えていないのですが、どうやらまたもや天然ぶりを発揮したようです。「この野郎!」と呆れながらも金本監督はすぐにステーキ弁当を特別に手配してくれました。