これから強行されようとしている汚染水海洋放出。目先のことばかりが議論されていることに強い違和感を覚えます。

 「基準値以下の処理水」を海水で薄めて放出することが盛んに強調されています。「諸外国でも同じことをしている」、さらに自民党・茂木幹事長は、「中国において放出をされている処理水、この濃度がさらに高いというのも事実」と発言しています。

 一般に、発電用軽水炉施設の通常運転時における放射性物質の放出管理は、ALARA(合理的に達成できる限り被曝線量を低減する)の原則に従い、「線量目標値」を設定したうえで行われます。すなわち、一般公衆の被ばく線量評価で「線量目標値」を超えることのないよう務めることとされています。この目標値は、法令で定められる許容被ばく線量(1ミリシーベルト/年)を遥かに下回る値になっています。具体的に言うと、放射性液体廃棄物による内部被ばく、放射性気体廃棄物による内部及び外部被ばくの合計で、0.05ミリシーベルト/年です。

 それでは、福島第一原発事故により実際に放出された放射性物質の量はどうだったのでしょうか。公表されている値から、放射性液体廃棄物についてセシウム137だけに注目し計算すると、「線量目標値」を満たす量のなんと約7万倍が放出されています。

 これが、何を意味するかというと、福島第一原発ではすでに低く見積もって約7万年分の放射性物質が放出されているのです。「もう一滴たりとも放出しない」。これこそが、本来東電や国が示すべき姿勢ではないでしょうか。言い換えれば、仮に放出するのなら7万年経ってから、ということです。

 過去を振り返らない。福島第一原発事故をなかったことにして、更なる放射性物質を海洋に放出すること。その濃度の濃い、薄いなど議論しても全く意味はありません。絶対に行ってはならないのです。

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