「甲子園に行くことって、どんなメリットがあるんですか?」 中学生からの質問にハッとした。
今までそんな疑問を投げかけられたことがなかったからだ。
質問主は、中学硬式野球・ポニーリーグの神田Rebaseポニーに所属している中学3年生の外野手・松本怜青(れあ)だ。全国的にはまだ無名の選手。16歳以下で構成される「U16コルトの部」の日本代表選手として、6月のアジア大会(千葉開催)で優勝。
決勝のフィリピン戦では低反発バットで市原ゼットエーボールパークの右翼98mのフェンスに直撃する三塁打を放った。
7月下旬のコルト・ワールドシリーズ(米・イリノイ州マリオン市)進出の立役者となった一人だ。

「野球を始めたときから、甲子園に興味がわいたことが一度もなくて……。それに勝手なイメージですが、高校野球で甲子園を目指すくらい練習したら、勉強がおろそかになってしまう印象があるんです。もちろん、トラ(蔵並)や友達が甲子園に行ったら絶対応援しますけど、自分がやるってなったらどんな感じになるんだろうって考えました」
松本の評判を聞いてスカウトに訪れた高校野球の関係者は一人や二人ではないそうだ。
良い条件で誘ってくれる学校もある。
そこでふと、思い浮かんだのが冒頭の言葉だったそうだ。
「高校で野球をやるなら“高校野球”しかない、っていうのが日本なんですよね」。
記者の取材経験では、中学生の選手10人と話せば8、9人は「高校野球を続ける」「甲子園に行きたい」と言うものだ。それが当たり前だった。
「甲子園のメリット」を聞かれたことはなく、甲子園にたどり着くまでの努力や人間形成に価値があると思い、日々取材をしてきた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/29c7c9e2cb246bac7a36ecca97033a8969dee639?page=1