●車の部品を破壊「客に請求かけといて」

売上のためならば、客の車も平気で壊す。ビッグモーターで整備士をしていた高木さん(仮名)は、そんな上司のやり方に「ありえない」と嫌気が差して退職したと語る。

客に頼まれ、車検に出された車のエアコンを点検していたときのことだった。
「工場長が電動ファンモーターを叩いて点検している最中に、ラジエーターという冷却機関の部品を破って壊してしまったんです」。

高木さんが「さすがにラジエーターは請求しませんよね?」と聞くと、工場長は「よく壊れるものだから、お客様にもともと壊れていた旨を説明して、請求かけといて」と指示した。
平然と客に払わせようとする様子に、罪悪感は微塵もない様子だったという。

上司が客の車をわざと壊しているのを見たのは、一度や二度ではない。
1台あたりの車検の単価を上げるためにブレーキオイルが漏れているように見せかけたり、ゴムブーツを故意に破ったりしていたという。

●前社長・兼重宏行氏が生み出した「文化」

1976年に山口県で創業したビッグモーター社。
右肩上がりに事業を拡大していく時期に所属していた元工場長の千葉さん(仮名)は、前社長・兼重宏行氏について「ワンマンがすごかった」と振り返る。

「売上至上主義で社員の出入りが激しい。前社長は記者会見ですべて否定していましたが、社内間の連絡ツールで、社員に罵詈雑言を浴びせていました。
だから役職者が皆真似して、部下に同じようなことをいう。前社長が生み出した文化ですよ」(千葉さん)

店前の街路樹を切るなどの問題点が指摘されている「環境整備」も、前社長の号令で約20年前から始まったという。
月1回、タイミングは幹部の思いつきだった。

「ボーナス査定がかかっているし、みんな前日の夜遅くまで一生懸命掃除しました。でも重箱のすみをつつくような難癖をつけて、役員が喜んでいた」。
敷地内で文句をつけられなくなった末に、道路の雑草まで注意するという異常なエスカレートの結果だったと嘆いた。

これらの声は、寄せられた情報の一部に過ぎない。次々と、明らかになる不正行為。膿を出し切ることはできるのだろうか。