喜納昌吉がまだコザ市(現沖縄市)の中学生であったころ近所であったショッキングな話がもとになっている。

昌吉少年の近所に住んでいたとある一家。戦争の混乱の中で、精神を病んでしまった母親が7歳の娘の首をまな板の上で斧で斬り落としてしまうという事件が起こる。

帰宅した父親は毛布の先に出ている娘の足を触ってその冷たさに驚き、毛布をめくると首のない娘が中にあった。
母親は切り落とした娘の頭を釜で煮て食べようとし、最後には自殺してしまった。
のこされた父親はこの事件のせいで村八部にされてしまう。次第に酒に溺れるようになり、交友のあった喜納家に頻繁に来ては酒をせびるようになった。
古い民謡を口ずさむそのおじさんと「ハイサイ」と声を交わし、酒を恐る恐るあげる中学生の昌吉。
そんなことを繰り返しているうちに昌吉少年の頭の中に流れ出して出来上がったメロディがこの『ハイサイおじさん』だった。

『ハイサイ』はうちなんちゅー言葉で「こんにちは」という挨拶だ。
そう、この歌の出だしはいつも昌吉少年から「変なおじさん」への語りかけで始まっている。
声をかけるのはおじさんのほうではなく、少年からなのだ。

これに気が付くと、昌吉少年のやさしさが次第に分かってくる。曲中の掛け合いも酔っぱらいをからかっているだけのようで、そうではないことが分かる。

3番、4番の歌詞ではおじさんのハゲやヒゲを指摘しながらも、昌吉少年はそれを笑ってはいない。おじさんもいたって真面目に反論する。
2番では昌吉少年は「俺もいい齢になったから、おじさんの娘を嫁にくれよ」とまで話かけている。
その娘は実の母親に首を斬られてもういこの世にはいないのだが、昌吉少年もおじさんも、あたかもその娘が生きて元気かのようにやりとりをする。