木内のこの記事だいすき
純度100%のタヌキ親父

https://number.bunshun.jp/articles/-/19008?page=1

 石田、柏葉、また石田――。意表を突く継投は、木内マジックと呼ばれて長く語り継がれている。
だが、木内は魔法を使ったとはけっして思っていない。

「石田はね、守勢にまわると弱い子なんだ。死球を出して弱気になっちゃったから
一度冷静にさせようと思ったんだ。あいつ、ライトで後悔してたなあ」

 図太い吉田には焚きつけるようなことを言い、繊細な石田にはチャンスを与える。
木内は子どもたちに合わせて采配を振るっていただけだった。

「そう、性格が弱い子には弱い子なりの、強い子には強い子なりの付き合い方がある。それだけのことだっぺ」

 木内は種を明かしてみせた。

「結局僕たち木内さんの掌で踊らされていたんですね」

 後年、同じく指導者の道を歩んだ中島は、木内の考え方が理解できるようになった。
耳元には、あのときの記者の声がこびりついている。

――桑田が言ってたよ、これが茨城県一のチームですかって。

「あの言葉でこの野郎って思ったんです。ひょっとして……、あれも木内さんの仕業だったのかなあ」

 26年後のいまも、教え子たちは魔法にかけられたままだ。