第4章 上司の転がし方/有吉弘行

竜兵会の中で、竜兵から一番可愛いと思われているのが自分。
それには自信がある。

2人きりの時はひたすら持ち上げる。
たとえば「高校生の時、竜さんみたいなリアクション芸人を目指してたんです」と平気で言える。
普通はヨイショもそれで終わるが、更に「高校の時に深夜番組の『ダチョウ三銃士』を見て
竜さんに憧れてこの世界に入ったんです!」と言える。
もちろん全部ウソ。リアクション芸人なんて憧れたこともないし。

更に
「リアクション芸人も神から選ばれた人しかなれないんで、僕なんか絶対無理ですけど・・・」
と言いながら泣き出す。僕、泣きますよ。本当に。
泣いてると、竜さんは俺の肩を優しく叩きながら、
「そうだな、おまえのキャラもあるし、みんなの前では言えないだろう。
わかる、わかるぞ。俺の前では泣いて本当の姿を出していいぞ」
ともらい泣きしてくれる。
ここまで来れば簡単ですよ。完全に僕のペースですから。

こうしておくと、みんなの前で竜さんにどんな悪態をつこうが、竜さんの心の中では
「有吉は、2人きりでいるときに俺の前で見せた方が本当の有吉だ」と勝手に思ってくれる。
「悪態つくのも、みんなには本当の自分を見せたくないからなんだな」と同情すらしてくれる。
無礼さが、むしろ「可愛いヤツだ、みんなの前では無理してるんだ」と思ってくれて、
一回良いように思わせとくと、あとは勝手に何をやっても良い方に解釈してくれる。