■「1万円札を福澤諭吉先生から変えてはならぬ」

 そのひとつが1万円札の刷新だ。肖像が聖徳太子から福澤諭吉になったのは1984年。2024年上期に40年ぶりに福澤から渋沢栄一に切り替わる。「慶應で先生と呼ばれるのは福澤先生だけなのです。塾員の間でも粗末に扱うなと怒りの声が出ている」(同)という。事実、甲子園でも「1万円札を変えるな」というシュプレヒコールが湧き起こった。

 慶應キャンパス内の塾生向けの掲示板に張り出される教職員の名前はすべて「○○君」となっている。ジャニーズ事務所のタレントが先輩の木村拓哉に対して「キムラくん」と呼ぶのと似ているが、意味合いはちょっと違う。福澤諭吉が絶対的な存在で、それ以外の塾員・塾生は全員、福澤の弟子であり、横並びなのだ。

 「とはいっても、実際に学生から君付けで呼ばれたことはありません。さん付けはありますが、1対1では○○先生が普通ですね。ずいぶん年下の学生から○○君といわれると、さすがに腹を立てるかもしれないですが」と文系教授は笑う。

 三田会の会員同士でも君付けで呼ぶことはあまりないというが、今回の高校野球優勝で「応援の仕方で方々から顰蹙を買いながらも、より結束力が強まったことだけは確か」なようだ。