全てを捨てた勝負の7年目

 秋季キャンプの前、森繁和監督からはセカンドコンバートを命じられていた。また、プライベートでは結婚した。

「正直、サードでレギュラーという憧れはありました。でも、チャンスはセカンド。だったら、必死で守って、あとは打てれば、試合に出られると思ったんです。試合に出ないと、家族が養えない」

 試合に出るためにどうするか。高橋はサードの次にホームランを捨てた。

「結局、首脳陣はヒットを毎日打っている選手は代えないんです。1本でもいいんです。例え、週に1本ホームランを打っても、レギュラーを争う僕みたいな立場の選手は3、4試合タコったら、出番はなくなります」

 ヒットを打つため、スタイルも捨てた。

「波留(敏夫)さんのアドバイスもあって、生まれて初めてバットを短く持ちました。あと、追い込まれてからは徹底的に逆方向を意識するようになりました。これも初めてです」

 バットを長く持って、引っ張って、ホームランを打って、サードを守る。高橋はその全てを捨てたのだ。