「あとはね、(現役時代、阪神キャンプに臨時コーチとして来ていた)広岡達朗さんですか。僕、20分説教されましてね。僕が肩を痛めてたんですね、キャンプで」
 そう話すと、アニキは広岡氏とのやり取りを再現してくれたのだが、これが実に振るっている。
「金本君、スナップスローをやってみなさい」
 外野手はスナップスローを使わないうえ、肩をかばってのスローイングをするしかなかった。
「それはスナップじゃないんだよ」
「わかってますよ。どうしても肩が思わしくなくて」
「ふーん、そうなんだ。大変だねぇ。スナップやってごらん」
「いや、だからちょっと肩痛いんで‥‥」
「キミは何でこうやって投げるんだ?」
「あの、肩が‥‥」
「でもね、そんな投げ方してたら長く野球できないよ。もっと力を抜いて、体を使って。やってごらん」
 広岡氏の「指導」は打撃にも及ぶ。

「何でキミはこうやって打つんだ。もっとこうやってこれで‥‥ダメでしょ。そんなんでよく打てるね。長く野球やりたいだろ。キミ、年いくつ?」
「42歳です」
「おぉ‥‥。けっこう長くやってるんだねぇ‥‥」
 アニキはこれを次のように「総括」した。

「これホントの話なの。人の話、聞かないんですよ。アンタ、生涯打率2割4分か5分やろ(実際は2割4分)。で、(長く野球をやれと言う)広岡達朗を調べると、35歳ぐらいで引退してるんですよ。ああいう年の取り方はよくないですね。若い人は絶対に耳を傾けないですよ」

 球界のご意見番たる重鎮も、真っ二つに斬られてしまったのだ。