>>44
「カワさんはファーストの守備が本当に下手だった。『俺はこの辺りしか捕らないからな』と言って、自分の胸の辺りに弧を描く。練習中ならまだしも、試合でもその範囲に来た送球しか捕らないんだから。

決定的に決裂した日のことは今でもよく覚えているよ。’54年4月27日の西京極球場での洋松(現DeNA)戦で、8対4で勝っていて9回裏を迎えたときのことだった。ピッチャーはベテランの中尾(碩志、通算209勝)さんだったかな。

2回ショートゴロが来て、2回とも一塁に悪送球して1点を追加された。悪送球っていっても大暴投じゃなくて、ちょっとジャンプすれば捕れる球。だけど、カワさんは捕らない。そして青さん(青田昇)に逆転満塁ホームランを打たれてサヨナラ負け……。敗戦は悪送球した自分のせい。

ゲームが終わってひとりでいるところに担当記者が近寄ってきて『えらいことしたね~』って声をかけるから、『悪いことをしてしまった……でも、あのくらいの球を捕らんファーストがいて野球ができるかい!』って言ったんだ。それが翌日、新聞にデカデカと載ってさ。
https://nikkan-spa.jp/1765751