僕に対するブーイングはなかなか壮絶でした。今までに聞いたことのない声量が場内にとどろき、スタンドから飛んでくるヤジの一つひとつが殺気立っている。「これがブーイングなんだな……」と実感しました。よほどメンタルが強くない限り、まともな精神状態では投げられないと思います。

 とはいえ、人間には適応能力というものが備わっています。あまりに長くブーイングを浴びていると、次第に一つひとつのヤジが聞き取れるようになってきます。

「殺すぞ」と言われれば「殺さないでください」と思い、「次当てたら覚えてろよ」と言われれば「わかってます。当てませんから」と心のなかで答えていました。

 でも、今まで通り投げられたかというと、そうでもありません。強打者が右打席に入り、「もう、ああいうことはないようにしよう……」と思えば思うほど、山田選手へのデッドボールがフラッシュバックしてきます。こうした自分のメンタルのブレがチームに悪影響をもたらし、もどかしくて仕方ありませんでした。

 その後、シーズン終盤に戦線復帰した山田選手と対戦する機会がありました。僕にはもうインコースを突く勇気はありませんでした。

「次に当てたら、本当に殺される……」

 苦し紛れに投げたスライダーは、山田選手に簡単にレフト前へと運ばれました。

 山田選手にも僕と対戦するやりにくさがあったのでしょう。本来の山田選手なら、スタンドまで持っていかれても不思議ではないボールでした。その後、人づてに山田選手が「田原さんとは対戦したくない」と言っていると聞きました。

 僕は現役時代、通算207イニングを投げて15個の死球を記録しています。でも、僕のなかでは、「30~40死球」は与えている体感なのです。山田選手へのあのデッドボールが、20個分くらい重みとして深く刻まれているのでしょう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ae21aae0d001cdbd79755bea06729d6a37b182e5?page=2

山田に死球当てた田原とか結局ヤクルトが話題になるのは死球なんだよね