在野でずっと夢見てきた「球団再建計画」が彼の行く末を決めた。選手の動かし方も、食堂の流通も、球団運営の何たるかも知らずに、本気でシミュレーションを繰り返した。絶対に失敗する訳が無いと本気で信じて…。

会話も笑顔も白米も奪われた選手はわけのわからぬまま野球に従事し、何人もの選手が不調、故障、コンバート、時には粛清によって野球人生を狂わされた。

そこまでしておいて、チームの白星は予定を遥かに下回る。計画性はともかく、人間は食事や娯楽がろくに与えられなければ体力も精神も持つはずがないので当然の話であった。

そんな彼が描いた計画は、高校時代の戦友と共にたった三年で仕上げる予定であったという。全ては教団で培った精神の下、本当に幸福なチームになると信じての事だった。
彼は選手やファンが苦しむ様を見て楽しむサディストなどでは決してなかった。理想に燃えるひたむきなロマンチストだったのだ。

ポル・ポトは、本当に国民を幸せに出来ると信じていたのである。