高校時代は苦しかった。入学式で卑わいな言葉を口にし、周りから避けられた。「うんこ」と言ってしまいそうになると、直前に「ふんが」と言い換えてごまかした。「ふんが先輩」とあだ名が付いた。上級生や下級生からもそう呼ばれるようになった。症状をまねされるのも苦痛だった。「いじめかどうかはわかりませんが……」。思わず手を出しそうになったこともある。

 とりわけ苦しかったのは通学時間。電車がホームに着くと、真っ先に車両の連結部へ移動し、両方のドアを閉めて密室を作った。ここなら声もあまり漏れない。手が動いてもドアをたたくだけだ。肘の内側に口をあて、「うんこ、うんこ、死ね、死ね」と叫び続けた。その間も、体は勝手に動き続けた。「ひとりでいると楽だけど、ひとりでいるのはつらかった。なんで自分だけこんなところに」。ドアのガラス越しに広がる乗客たちの「日常」がまぶしく見えた。