私自身が調べた例では、非常に強固に一夫一妻を守っているモズでも、10%の雛がつがい外の子であることがわかった。つがい外の雛の割合は種や個体群によって違いはあるが、多くの鳥類で数%から30%程度になる。このように婚外受精が広く見られることから、一夫一妻は絆の強固さを示すのではなく、逆に夫一妻制が婚外受精を生み出す原因になっていると考えられ始めている。

つまり、雌は質のよいなわばりと質のよい遺伝子を併せもつ雄とつがうのがもっとも良いが、一夫一妻という社会的制約のために優れた雄とつがうことができるのはごく少数の雌に限られる。その結果、競争に負けた多くの雌は妥協策として次善の雄とつがい、その雄に子育てを手伝わせる一方、婚外交尾でよりよい雄の精子をもらうという戦略をとるのかもしれない。

(にしうみ・いさお/国立科学博物館動物研究部研究員)

なるほどな