日本国内で2020年に発生した狂犬病患者の報告

1957年以降, 日本国内では狂犬病輸入症例として1970年に1例, 2006年に2例が報告されている1-3)。14年ぶりとなる2020年に狂犬病患者が確認されたため, その臨床経過を報告する。

 症例:30代, 男性

 主訴:発熱, 異常行動

 現病歴:フィリピンからの来日3カ月後に両足首の痛みを訴え, 発症2日後には腰痛も出現したため, 鎮痛剤の内服により経過をみた。翌日には日本にはいないはずの妻が見えるという幻覚が出現した。水が怖いという訴えはあったが, 水分補給や食事はわずかながらできていた。4日後, 夜中に妻を探し回るという異常行動が出現, その翌日には歩行が困難となり7日後に当院を受診した。介助なしでは歩けなくなり, 落ち着きがない, 会話の辻褄が合わないなどの異常行動が認められた。発熱も認められたため, 意識障害の精査・治療目的で入院となった。

 
https://www.niid.go.jp/niid/ja/rabies-m/rabies-iasrd/10301-494d01.html