――すでにファンの間では知られていることですが、『ダイの大冒険』ポップは途中で亡くなる予定だったと、今回の本でも明かされています。
「クリリンがフリーザを倒したらびっくりしませんか?」という説得などで命が繋いだそうですが、なぜそこまでポップに想い入れがあったのか、連載初期段階からポップが第2の主人公という立場で考えていたのか、ポップが作品に不可欠だった理由を教えてください。

【三条】 ジャンプ誌上で『ドラクエ』の漫画を成功させるために大きく二つの方針を決めました。一つは今まで成功したジャンプ漫画の黄金パターンを総動員して『ドラクエ』の世界観に融合させること。
これはもう基本戦略とも言えることだったのですがもう一点、それまでのジャンプ漫画があまりやっていなかった要素を入れて他作品との差別化を狙うということを考えました。

 その意味でやりたかったのがポップのように「主人公の引き立て役のように見える脇キャラ」が成長して最強のメンバーの一人に昇格する、ということでした。
当時のジャンプは人気・実力が優れたキャラだけが選抜されてレギュラーに残っていく作品がほとんどでしたので、上手くいけば全然違う支持のされ方をする作品になるのではないかと思ったのです。
自分が映画やアニメを見ていても気にも止めていなかったような脇キャラが後半大活躍するような作品の方がより好きでした。

 でもそのために前振りとして最初はポップのダメな部分が強調されますから、当然の反応として鳥嶋さんから「こいつ、早く殺そう」と言われました。一生懸命、それが狙いであることを説明し、ポップは一命を取り留めました(笑)。

 勇者のダイと対比される一般人代表であり、連載という冒険を共にする読者のアバターとしてポップは第2の主人公なのだ、と自分の中では最初から考えていました。
ですからそのポップがどんどん強く成長することに関しては多くの読者が喜んでくれるだろうという確信がありました。結果上手くいったんだな、というのは最近当時の読者の方々からのお話を聞いて実感しているところです。