この国は今、未曽有の危機に直面している。

かつて「エコノミック・アニマル」と称され、一気呵成に経済成長を遂げた戦後の栄光は、今や見る影もない。

国が抱える、月まで届きそうなほど積み上がった負債。先進国のなかで最も深刻な少子高齢化。新たな産業が育たず、イノベーションが生まれる土壌がない。平成以来続いている「失われた30年」は終わる気配がない。

「一流国」から「二流国」へ転落したかのように思われるこの国に、逆境の嵐が吹き荒れている。円安だ。かつて安倍政権が推し進めた経済政策・アベノミクスの「第一の矢」である金融緩和が尾を引き、日本銀行(以下、日銀)は紙幣を際限なく刷り続けている。これが昨今の円安を誘引した。

2022年12月、日銀はこれまで続けてきた金融緩和策を一部改めることを決定し、約0.25%に抑制してきた長期金利を、約0.5%に引きあげる方針とした。この動きにより、投資家たちの間で、「日銀は金融緩和を一層縮小させるだろう」という見方が広がったためだろうか。2023年1月3日の外国為替市場では、日本円は一時1ドル=129円台まで上昇する局面もあった。

とはいえ、気を抜くのは危険だ。円安傾向は当面続くと私は考える。
大半の海外投資家は、昨今では、徐々にこの国を見捨て、「円売り」の動きが加速しつつあるからだ。