人気カレー店店主が嗅覚障害に コロナ後遺症で廃業・退職相次ぐ

 行列が絶えなかった東京・新宿御苑近くのカレー店「草枕」が4月28日、17年の歴史に幕を閉じた。スパイスを配合するには匂いを嗅ぎ分けられる鼻が欠かせない。しかし、店主の馬屋原亨史(うまやはらりょうじ)さん(45)が新型コロナウイルスに感染し、後遺症で嗅覚障害になった。「やめたくないけど、匂いが分からないからどうしようもない」。無念の決断だった。

コロナ前はテレビや雑誌で話題の人気店

 2007年にオープンした店は13年に移転し、雑居ビルの2階にあった。大手グルメサイトで高得点を獲得し、新型コロナ感染拡大前のランチタイムは20席がいつも満席。3階や4階に続く階段には行列ができていた。

 馬屋原さんは北海道大出身。学生寮の「恵迪(けいてき)寮」で仲間と自炊をする中で、ルーを使わないカレー作りに目覚めた。卒業後は制御・計測機器メーカーに就職したが、カレー好きが高じて脱サラし、アフリカ、インド、ネパールを巡ってスパイス料理の研究にのめり込んだ。

 開店当初は知り合いしか来なかったが、タマネギ1個分を刻んで炒め、独自に配合したスパイスと合わせた一皿は次第に人気を呼び、テレビや雑誌にも取り上げられるようになった。

味の調整、改善ができないのは苦しい

 だが、馬屋原さんが22年夏に新型コロナに感染し、事態は暗転した。倦怠(けんたい)感がひどく、「近所のコンビニに出かけただけで寝込む」という状態が2カ月ほど続いた。注意力や集中力が低下する「ブレーンフォグ」と呼ばれる症状もあり、スタッフの給与計算もよく間違えるようになった。