尾田栄一郎:
人が死んだから泣くってね、感動じゃないんじゃないかと思うんですよ。お葬式に行ったら皆泣くでしょう。
その涙と同じなんですよね。漫画の中でキャラクターが死ねば、悲しくて涙が出るんです。
僕もそういう涙を描かないわけではないけれども、それを描くときは「この涙は悲しみの涙だ」と、涙の種類を区別してます。
「感動の涙」は、それとは別なんです。僕の漫画のキャラクターは、耐える時間がものすごく長いんです。
涙に盛り込んだドラマの数も他とは違うと思っているんですけど、とにかく、辛いことがあったぐらいではまず泣かない。
もっともっと辛いことがあってもまだ泣かない。耐えて、耐えて、そして優しい人が現れた時にやっと出てくる涙っていうのはもうしょうがない!
しょうがないと僕が思えた時にやっと泣く涙が「感動の涙」なんです。その時は僕も泣きながら描いてます(笑)。
自分が泣けない話では人は泣かないと思っているし、嘘でキャラクターに涙を流させるようなことはしたくない。読者に失礼だと思うんです。