「実は、男の人が好きなんだ」

「知ってたよ。母親が気付かないわけないでしょ」

母はなんでもないことのようにそう言った。僕の性的指向を、あっけないほどに受け入れてくれていたのだ。


カミングアウトした直後に母の口からこの言葉を聞いた時は、ようやく真正面から向き合えた気がして、不覚にも泣いてしまった。

この瞬間までは、これから改めて母とちゃんとした親子関係が構築できると信じていた。
その直後、何の脈絡もなく彼女がいきなり安倍元首相や日本政府を称賛する話を始めるまでは。

僕が勇気を振り絞って行ったカミングアウトは、母の唐突な安倍晋三語りにより、たった数分で終了した。


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