福澤は、貧乏人を教育から締め出すことを明確に肯定した。
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「銭ある者は上等の衣食を買ふて衣食す可し、銭なきものは下等の衣食に満足せざるを得ず。簡単明白の数にして、今の人間万事この法則に洩るゝものあるを見ず」(「官立公立学校の利害」)。
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 金持ちはよい服を着て美食するが、貧乏人は粗末な衣食で満足するしかない。これが世の常態である。

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「故に教育も亦この法則に洩るゝこと能はずして、富家の子弟は上等の教育を買ふ可く、貧生は下等に安んぜざるを得ず」(同右)。
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 世の中の法則では、金持ちの子弟が高度な教育を受け、貧乏人は低いレベルの教育で満足するのがむしろ当たり前なのだ。福澤はこう断言した後で、官公立学校がすぐれた教員陣や施設を整えつつ、学費を安くして「貧家の子弟」に門戸を開放していることを批判した。