慶長14年、関ヶ原の勝者家康は天下統一の仕上げとして豊臣に戦を仕掛ける。
太閤秀吉がその力を全て込めた居城大坂城。そこにはかっての栄光を取り戻すため、豊臣のため多くの浪人、武将が集まっていた。

かっては土佐22万石の主 長曾我部盛親
秀忠3万を足止めした昌幸の子 真田信繁
宇喜多家57万石の筆頭家老であった 明石全登
黒田家では1万6千石を拝領した男 後藤基次
豊臣へ為、1千石をなげうち馳せんじた 毛利勝永
豊臣家臣筆頭大野治長の弟 大野治房
秀頼の乳兄弟、弱冠22の美男子 木村重成
かれら七将の他、薄田兼相、塙直之等の歴戦の強者達
しかし、大坂城の最高権力者は秀頼の母淀とその取り巻き達であり、七将らの発言力は弱かった。
又、この七将達も思惑はそれぞれ。真に豊臣の為に戦うは毛利、木村、大野くらいか…。

その時、浪人で溢れかえる大坂城の人だかりを掻き分けて本丸に向かう男が一人。
全身に水を滴らせ、息も絶え絶えだが、眼光鋭く人々は気押され、彼のために自然と道が出来ていた。
しかし、一介の城兵を城内に入れるわけにはいかぬと彼を遮る門番。しかし、そのずぶ濡れの男は一喝した。

その頃、殿中では真田、後藤らの野戦出兵策は退けられ、籠城と戦いの方針は決まっていた。
「真田殿、後藤殿の策を取れば勝てようものを……」
歴戦の武将達はこの大坂城の首脳陣を嘆くと共に、彼等を押さえ、七将すら束ねる強い指導力と実績を持つ男が居れば…と思わずにはいられない。
初めはそれを、秀吉の遺児、秀頼に期待したものだが、もはや望むべくもない…そんな時だった。

――バタン!!
ふすまを開き、ずんずんと上座に進む男。それはさっき、大坂城に現れたずぶ濡れの男だった。
「何者ぞ!!」
叫んだのは若き秀頼の忠臣、木村重成。
しかし、彼の後ろの淀殿や治長、いや、彼らだけでなく後藤や真田ですらその顔に驚きを浮かべ、ただ呆然とその闖入者の顔を見ていた。
「殿……」
明石全登がようやくといった感じで放った言葉に、重成を初め、その場に居た武将達は皆、驚きの声をあげた。

「宇喜多備前中納言八郎秀家、豊臣家の御危機を聞き、八丈島より  泳  い  で  参  っ  た  !!!」