地元猟友会の警察に対する不満は、いまに始まった話ではない。たとえば、'12年に「秋田八幡平クマ牧場」でヒグマが脱走したときも、同様のトラブルが起きている。これは牧場から6頭のヒグマが脱走し、従業員2名が殺された凄惨な事件だ。

当時、20人近くの猟友会の会員が牧場に集められたという。このうちのひとりがこう語る。

「現場を取り仕切っていた担当者は、どこからどうやって、何頭逃げたのかを把握していなかったのです。事前情報がない上に、一度も撃ったことのないヒグマを相手にしなければならなかった」

積極的な攻撃性を持ったヒグマと臆病で警戒心が強いツキノワグマとでは、駆除するための装備も変われば使う銃弾も変わってくる。

ヒグマが相手となっては猟銃も装備も脆弱だと判断した猟友会は「自衛隊に頼んでくれ」と断ったが、警察は聞いてくれなかった。

「結果的に脱走した全頭を射殺して、警察署長から感謝の言葉とタオルを貰いました。これだけの死亡リスクを冒した対価がタオルかと思うと、悲しくなったことを覚えています。

猟友会は民間人の集まりであって、警察や自治体の下請けや下僕ではないのです。それなのに便利屋扱いをする態度は昔から変わりません。私たちの仕事に見合った報酬を支払えないのであれば、警察内に有害獣駆除の専門チームを作ってほしいです。住民の生命のために体を張れる人材は、時間をかけてでも育成するべきです」