ゲンスルーは何故あんなに強いのか

世のSRPGというジャンルはそもそもの初めから瑕疵を抱えている。プレイヤーは自分の兵士を戦場で自由に動かせるだけでなく、彼らを成長させる事もできる。つまり一つのゲームの中に二つのパートがあるのだ。そして困った事に、そのどちらかで成功すればするほどもう一方のゲームバランスが崩れるのである。

「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」は親から子への継承を主軸に据えている事もあり、慎重に案配すれば素晴らしい強さを持ったスーパーユニットを生み出す事ができた。そしてそれは敵とゲームバランスを諸共に葬り去った。ユニットを鍛えるパートで成功する事によって、ユニットを動かすパートの難易度が大幅に下がるのだ。上手なプレイヤーほど簡単な課題を与えられるという逆転現象がここに生ずる。

ここで漫画の世界を見てみよう。「ドラゴンボール」は強さのみが支配する空間だった。強大な敵を打ち倒す方法はただ一つ、それよりも強くなる事だけだ。だからこそ登場人物達は修行に打ち込む。これは成長パートのみのゲームに似ている。

「JOJOの奇妙な冒険」は対照的に、作戦を工夫する事で敵のトリックに対処する。主人公達の戦闘力が劇的に高まる事は無い。あくまで所与の戦力で戦い抜くわけだ。これは戦術パートのゲームに対応する。

ところが「HUNTERxHUNTER」はその両方の要素を持っている。主人公達は修行に励んで強くなる。同時に、戦術を工夫して格上の敵を倒そうとする。ゆえにこの作品の敵役は異常に強い。主人公が強くなった上に知恵も絞ってようやく倒せる水準である。そうでなければ話が成立しない。

成長と戦術の要素を持つゲームは、その両方で最大限に成功した場合とてつもなく強い敵が出て来なければ釣り合いが取れないのである。それゆえ構造的に難易度の問題を抱えてしまう。成長パートが単なる難度緩和装置になってしまうのはよくある事だ。

一つのゲームに主軸は一つ。大黒柱は一本にしよう。